京極夏彦『邪魅の雫』
「関口は顔を歪ませた。笑っているのだ。」 (本文P170より)
「関口は鉄砲で撃たれかけた猿のように萎縮してふらつき乍ら立ち上がった。」 (本文P601より)
「おいお前、お前、真実のバカオロカだな。ロイヤルバカオロカデリシャスだぞ。……」 (本文P656 榎木津のセリフより)
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講談社ノベルズで800ページ超えという『鉄鼠の檻』並みの分厚さ。読むのに時間がかかりました。
これだけページ数が多い作品では、作者は「読者に対する情報の出し方」も相当な計算をしていると思う。
本書では、「あの男」「あの女」という表現が多い。こういった表現が多様されると、単に自分の読解力がなく見極められていないのか、あえて中途半端な表現や説明のままにしている(情報を隠している)のでわからなくてもよいのか、区別がつかず不安に襲われることがある。私は、バカオロカなため、途中多少悩みながら読んだわけだが、他にもそういう不安・混乱に陥った人もいるかもしれない。
本作については、これは冒頭「貴女は勘違いをしていたのだ」(P6)という出だしで始まることから推測できるように、最大のキーを隠すための手法(京極夏彦の『絡新婦の理』(冒頭、「貴女が蜘蛛だったのですね」)と同じ)に過ぎないと途中で気づいてからは、安心して読めた。
※女についてはすぐわかったが、男はちょっと混乱しちゃったというのが正確なところ。この章は誰が主人公だよ?という感じで。
ただ、同じような内面を抱えた人物や、警察関係の人物を出しすぎなのが、ちょっと辛かったが。また、内面描写を、表現を変えて何度も繰り返したりするので、辛い部分はある。ファンにとっては、これがよいのだが、無駄ともいえる。
本作では「世間」「世界」「評論」「嘘」「言葉」「価値観」などが重要なモチーフとなっており、京極堂(中禅寺)が講釈をしてくれる。
事件自体は、今までの作品に比べて派手さはない。しかし、流石京極夏彦という仕上がりの作品には間違いない。やっぱ凄いわ。
京極堂の登場シーンが、ちょっと物足りなかったけどね。あ、でもラスト4ページは、何度も読み返してしまいますな。
次作は『鵺の碑』とのこと。いつになるかわかりませんが、楽しみに待ってます!
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コメント
こんばんは。
TBありがとうございました。
妖怪ネタの少なさが物足りなくはあるのですが、
随所に京極らしさ、凄さを感じさせる作品ではありましたね。
いわゆる「セカイ系」の作品を分析、解体した上で、
再構築してみせたような所も、京極夏彦ならではで
面白く読めましたね。
投稿: トミー | 2006年11月30日 (木曜日) 午前 12時53分
トミーさん、コメント有難うございます。
仰るように妖怪ネタとか、薀蓄は少なめでしたけど、十分楽しめたし、やっぱ凄いと実感させられるものでしたね。
「セカイ系」についての京極さんのコメント、読んでみたいなあ。
投稿: 猫まんま | 2006年11月30日 (木曜日) 午後 06時13分