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最近読んだもので、超おすすめ(万人向け)

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クリス・ボイス『キャッチワールド』

もし、あなたが、SF小説は滅多に読まない、ギブスンなんて聞いたことねえよ、相対性理論とか言葉は聞いたことあるけどねえ~、というようなら、本書は絶対触れない方がよい。

しかし、書評サイトやAmazonの評価などは非常に高い。
だから、面白いんでしょ?オススメなんじゃないの?
と思われるかもしれない。
しかし、それでも私はNOといわざるを得ない。
なぜならば、内容が難解で理解できず、面白くないからだ。

勉強と同じで、わからないものは、つまらなく感じるのだ。
(教師は、子どもが何がわからないのか?どうわからないのか?を理解しようとしない。それが、教育における大きな問題点であると、私は思っている)

さて、本書が難解というのは、元々わけがわからないものなのか? 訳がクソなのか? それとも私の頭が悪いのか? おそらく、全部だと思う。

まあ、私の場合『月は無慈悲な』だけでなく、『虎よ!虎よ!』や『ニューロマンサー』なども途中で投げ出したヘタレなので、到底無理だ。以下、私の頭の悪さ、読解力のなさを棚に上げた上で、書かせてもらう。

本書は、筋を追うことはそれほど難解ではないし、会話の続くパートも比較的読みやすい。訳についても、矢野徹のようなクソ訳ではない。

ただ、とにかく説明不足なのである。あえて、読者に説明を行うという小説的手続きを省いているのではないかとすら思う。

特に前半、宇宙船や航宙の描写などに、難解な用語が多数登場して、よくわからない。そして、その説明がほとんどない。

この点で例を3つ挙げると、
●「バウル」について……初出に「素朴な円筒形の可動性のオートマトン」とはっきり説明されている。しかし、世の中に、「オートマトン」の意味をわかる人がどれだけいようか?
情けないことに私は知らなかった。なので、船外活動に使う(ロボ型の)乗り物のようなものと読み誤り、途中から艇内の作業・管理ロボットのような扱いになっている点に、戸惑ってしまった。
●「ゲルマニウム」について……ゲルマニウムはもちろん元素のことだ。そして、それは金属的なものではあるということは何となく想像がつくだろう(ただし、本書読書中は、その情報過多さに翻弄され、このことに気づけない可能性もある)。
本書では、ゲルマニウムを人体に定着させ、それを媒介として、MIがクルーの精神を読むという素晴らしいアイデアが出てくる。しかし、このアイデアに感動できるのは、ゲルマニウムが、「トランジスタの原料として使用されていた」という知識を持つ人に限られるのではないか?
電子工学などの知識を持たない者にとって、ゲルマニウム沈着から引き出されるアイデア(機能)を、理解することは難しい。一切説明なしにいきなり出てくる点が、残念だ。
●「プサイ」について……初出では、「psi」にルビが振られた形ででてくる。そして、「esp」と並列的に書かれているから、なんとなく超能力的なものであると想像することは可能だ。だが、普通の読者にはなかなか辛いのではないだろうか?
※Wikiによると、プサイとは、ギリシア語アルファベット「Ψ」とある。量子力学における波動関数を表す記号でもある。そして、心理学 (psychology)と超能力 (psychic ability/power) をあらわす包括的な単語・記号であるとのことだ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/Ψ

また、一見個性がありそうで、実は単に駒に過ぎないキャラ設定も、混乱さを増大させる。
いきなり物事が展開していることも多い。それに気づけないのである。
さらには、文脈を読み取れないため、ストーリー自体は複雑ではないのに、キャラの行動や思惑が意味不明に感じ、読書において指針を見つけられないのである。
※このあたりは こちら を参照。

これは、単純に小説としての問題かもしれない。とにかく、いろんな意味で読者を置き去りにして、物語は進んでいくのだ。終盤は、観念的・哲学的・抽象的描写が増えるため、科学的用語で苦しむことは減るが、これはこれでキツイと思う。

読了するのに、1週間近くかかってしまった。アイデアSFとのことなので、意地でも最後まで読もうと毎日電車・トイレで格闘続けたが、大変な苦行であった。

ストーリー的(アイデア)も、ベイリー作品などに比べると、それほどすごいかな?と疑問に思った。30年前のものと考えるとすごいが、独創的なアイデアをたくさん詰め込んでいるというより、単にいろんな要素をつめこんで、ゴチャゴチャになっている(それを最後に一緒くたにしてまとめている)だけという気がする。
あまりにも壮大なスケールの物語に、魔術とか考古学を持ち出してきたのも、余分な気がした。

ハード描写はきっとすごいんだろう。科学の先見性など優れた部分もあると思う。また、本作が数々の作品に大きな影響を与えているとも思う。<大自我>だとか、リリスだとか、私の大好きな『エヴァ』や『イデオン』にの原点になったと目することができる。
だから熱心なファンがついているのだろうとも思う。

このように、よくわからん作品、また抽象・観念論的作品は、「よくわからんけどなんか格好いい!」と思わせることが重要だ。たとえば、『2001年宇宙の旅』(『幼年期の終わり』)のラストの、モノリスやスターチャイルドの描写。わけがわからんけど、あれはカッコいいじゃないか!
だけど、本作にはイマイチそれが感じられなかった。とにかく、わからなさすぎた。

人それぞれ、作品に対する感じ方、評価は異なるであろう。ただ、私は、万人が読んで(広義の意味で)楽しめる作品、それこそが商業小説だと思う。
それ故、本作は商業小説として成功しているとは思えない。ある意味、ミニコミというかその手の世界では、神レベルといえるような小説だ。(誤解のなきよう)

解説の安田均によると(彼も、一度途中で挫折したらしい)、本書は、小説コンクールで大賞をとった作品だとのことだ。なるほどなあ、と思った。大御所の作家が書いた小説ならともかく、そうでない作家が、いきなりこんな原稿を送ってきても、編集者は突き返すよ。そして、そのまま世に出ないまま終わる可能性大だと思うよ。
本作に触れて、Amazon.co.jpの評価が、いかに当てにならないかということがよくわかった。レビュアーの一人は、中学生時代に読んだと書いてある。天才じゃないのか?

とにかくレベルの高い読者には「すごい!」と言わしめる本作は、傑作になり損ねた大作といえるのではないだろうか。

ある程度SF作品(ハードSF、サイバーパンク)に強い方、理系の方には、是非味見してもらいたい。万人向けとは言い難い本作は、普通の人にはオススメできない。途中でイヤになる可能性大!

ところで、早川書房は、なぜ前ソデに登場人物一覧を入れないのか?(本作ではあまり意味ないかもしれないけど)
このあたりの不親切設計も、非常に残念である。

どうも名作海外SFを読むだけの能力が私には欠けているようなので、しばらく早川の海外SFは手を出さないことにする。

なお、本書の読解に当たっては、下記のサイトを参考にさせてもらった。このサイトには、作品や「憂国」の構造に関する詳細解説がある。このサイトの作者さんは、宇宙関係の技術者さんだ。やっぱ、理系の人で、相当頭良くないと、この本はすごい!という風にはならないと思う。

長くなったが、最後に一言。

ネットで、この作品が大好き!と書いている人はきっとアタマ良いんだと思う。羨ましいなあ。私も、この作品を楽しみたかった。
ずっと先に、この作品を改めて読んでみようと思う。たぶん理解できないだろうが(W
実は、今日近所の古本屋で315円で本書が売られていたのだが、それを購入してしまった。なんだんだろうか、私は(W

■参考リンク 航天機構
「"キャッチワールド"解説と私的解釈」
http://www2a.biglobe.ne.jp/~mizuki/book/catch.htm
「「憂国」艦構造解釈」
http://www2a.biglobe.ne.jp/~mizuki/book/catchmek.htm

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コメント

初めまして、私はcatchworldを高く評価する者ですが、ハードsfとして時空宇宙、対宇宙戦闘法、航宙方法(ラムジェツト)、miと人間の統合方法など描写がクールであり,現実(リアル)的で(ラムジェット=質量比の問題から宇宙空間にある水素を燃料として使う)現実の延長線上の技術、方法論的で、ハードsfファンをうならせるものが,表現されている,と思うのです。宇宙旅行の解説本として、講談社のblue backs,銀河旅行part2が参考になります。

wolfpackさん、はじめまして。

なるほどなるほど。
どうも私にはとんちんかんだったのですが、そのリアルな表現手法などが非常に評価が高い理由なんですね。参考にあげていただいた本を読んで勉強してみます。

……いろいろ文句は書きましたが、重みのある作品には感じたので、古本屋で即効買いしてしまったわけですし(W

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