久坂部羊『大学病院のウラは墓場−医学部が患者を殺す』
『廃用身』『破裂』 『無痛』などで知られる久坂部羊氏の初のノンフィクション作品。
タイトルからすると、大学病院批判のようであるが、実際はそうではない。
前半では、『白い巨塔』以後知られることとなった、大学病院(医局制度)の封建体質を紹介している。
「治療」よりも「研究」が高位なものとされるという風潮、大学病院のエリート意識など、「世間」的には批判の矢面にたちやすい事柄だ。
ただ、本書では医師たちの側からの反論も紹介することで、医療の現場の抱える矛盾をよりはっきりと描き出している。
後半では、前半で紹介した旧来の体制を崩壊させつつある新しい医師臨床研修制度(2004年4月より)と、独立行政法人化を痛烈に批判。
また、医学の現場に対して無知のくせに、理想主義を唱え続けるマスコミ、そして「世間」を批判する。このあたりは、(なんとなくだが)久坂部氏らしいと感じるところだ。
最終的に、「医局制度」といものは必要悪である。一度大学病院自体をリセットして整備する必要があると、具体的に様々な提案を挙げながら締めくくる。医療秘書や「人体実験」の場のアイデアなどはなかなか面白い。こういう提案をできるというのは、小説家である久坂部氏だからこそといえる。
全体の感想としては、ふ〜んという感じ。ただ、今後「医療過誤」に対する見方が少し変わってくるかもしれない。医療に従事する人の感想を知りたいところだ。
病院関係者だけでなく、一般の人にも読んでおいてもらいたい本といえるかも。
ちなみに、本書の前ソデに、久坂部氏の顔写真あり。こんな顔をしていたのか(W
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