(2006年読了)ミステリー

奥田英朗『邪魔』

面白かったです。

八王子にマイホームを建て、夫と二人の子どもと幸せに暮らす平凡な主婦。しかし、夫の会社で起こった放火事件がきっかけに、彼女の人生は狂いはじめる……。

平凡な主婦が落ちていく様を、もう一人の主人公である刑事の苦悩をクロスオーバーさせ、見事な筆力で描ききった犯罪小説。
解説に、本作を『ある種爽快に道を間違えていく主婦と、やむを得ず壊れていく刑事の切ない物語』と評した言葉が載っているが、まさにそういう作品。

後半、主婦が市民運動に参加することになるのだが、市民運動のプロセスやカラクリなども丁寧に描かれており、なかなか興味深く読めた。

やや、ラストがブツンと終わった感はあるけど、なかなか良かった。

邪魔〈上〉 邪魔〈上〉
奥田 英朗

講談社 2004-03
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邪魔〈下〉 邪魔〈下〉
奥田 英朗

講談社 2004-03
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『最悪』 もそうでしたが、もう少し気の利いたタイトルにして欲しかったな。

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高野和明・阪上仁志『夢のカルテ』

人の夢の中に入ることができるという心理カウンセラーの物語。
ミステリー+SFファンタジー+恋愛ドラマという感じかな。

連作風の小説。可もなく不可もなくという感じで、なんだか「無難な小説」のお手本という感じ。テレビドラマなど、映像化などしやすい作品だろう。著者が著者だけに、なんとなくテレビドラマのイメージで読んだ。

ただ、第4章。通常の「恋愛感情」と「恋愛転移」の区別がつかず悩むというのは、この作品の主人公の性質なので仕方ないけど、なんだか理屈をこねくり回してるだけでややうんざり。またラストも、主人公たちの心の動きを、抽象的な表現だけで適当に終わらせたのは、いただけないなあ~。なんだかモヤッとしているのを、いきなり&無理やり解決して終わったという感じがする。
「夢を使って、自分の居場所を知らせる」というのはナイスアイデアですが。

あ、あとプロローグがよくわからん。どこかに結びついてるんでしたっけ? 見返すの面倒だから、まあいいや。

夢のカルテ 夢のカルテ
高野 和明 阪上 仁志

角川書店 2005-11-30
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島田荘司『最後の一球』

御手洗ものです。

文句は言いながらも、島荘作品は好きなので読みます。

『犬坊里美の冒険』 と同様、本作でも現行の裁判・司法批判がありました(W

で、本作も少々不満&疑問があります。
御手洗はどうして真相・犯人に辿り着けたのか?ちょっと省略しすぎでは?と思う。
灰などの成分も分析してないだろうしなあ。いくらボールが見つかったといってもねえ。

あと、ポリタンクはプレハブ小屋の中(床)にあったという情報が出ているのに、P74で「ポリタンクに引火した」と発言させるのは、ちょっと?
P234で小屋の前にポリタンクが置かれていると書かれているし、竹越に対するフェイクだとしてもねぇ~。

正直、御手洗じゃなくても良かった気がしないでもないけど、最近の中では、良いほうなのかな?

いつも思うんだけど、島田さんは事件本体よりも、それ以外の部分が特にうまいわ、読ませるね。あまり関係ない話とか、そっち方が面白かったりして、結構好きだわ。

最後の一球 最後の一球
島田 荘司

原書房 2006-11
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島田荘司『犬坊里美の冒険』

御手洗シリーズのスピンオフ企画。

う~ん、なんだかなぁ~。

途中そこそこ面白くはなるんだけどねえ~。

犯人が、共謀(みんな嘘ついてた)というのは、どうかと思いますよ。これやったらダメでしょ。まあ、第三者に目撃をさせてはいるけど。
※ネタバレなので、伏せました。

あと、P110に「歯が残っていた」と書いてあるのですが、このページ以外で「歯」について、まったく触れられてないのは、なんでですか? 俺が見落としたのかな?

ところで、この作品の時点で、石岡50歳、里美27歳ってか。里美が主役の作品はあまり読んでないんだけど、本作の里美は27歳にしては幼過ぎるんじゃね?と思っちゃいました。

いまいちな作品でしたが(世間的評判は良いみたい)、私にとっては、石岡先生の素敵なセリフだけが、救いでしたね。以下、引用します(P151より)。

「……涙にはそういう力があるんだ。涙って、うまくいえないけどさ、力を封じ込めていた蓋を、溶かすみたいな力があって……」
「怒りは駄目なんだ、瞬発力にしかならない。持続力になるものは、悲しみなんだよ。それも抑えた悲しみ」

犬坊里美の冒険 犬坊里美の冒険
島田 荘司

光文社 2006-10-21
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浦賀和宏『さよなら純菜 そして、不死の怪物』

<松浦純菜(八木剛士)シリーズ>第5弾。

1作目2作目は、単独で(推理)小説としての独立性があったが、3作目以降は、それを放棄、ラノベ的になってきている(執筆速度が速いのも納得)。
と同時に、脳内妄想の描写が多くなっている(しかも繰り返し、同じことばかり)。まあ、妄想は、八木剛士の趣味だから仕方ないか。

5作目にあたる本作は、前作の直後からの始まりで、記憶を取り戻す必要があった。

本作では、松浦純菜の出番はなく、八木剛士の恨み辛みと純菜への気持ちが延々と続く。そしてとんでもないラストやってくる。びっくらこいたよ。
エヴァのゼーレの会議(人類補完委員会)みたいなもの出てくるし(まあ、「力」とかスナイパーの理由付けをしようとしているんでしょうな。なくてもよいと思うが)。
とにかく、このとんでもなさ具合は、<安藤シリーズ>と同じで、先行き不安なところである(W)

まさに、「童貞・妄想炸裂系トンデモ小説」だ。

そんなわけだが、いろいろ笑えるポイントも多い。最近読んだ小説は?と聞かれて、八木が『バトル・ロワイヤル』と答えたり。日本語があまりわからないドイツ人留学生に「俺のことはカミュ・ビダン」と呼んでくれ、とかね(W)

「差別と推理小説」についての論説もそこそこ興味深いものがあった。

あと何作かは続きそうなので、次回作を楽しみに待つことにしよう。

さよなら純菜 そして、不死の怪物 さよなら純菜 そして、不死の怪物
浦賀 和宏

講談社 2006-11-08
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米沢穂信『氷菓』

第五回角川学園小説大賞で奨励賞を受賞した米澤穂信のデビュー作です。最近は、『夏限定トロピカルパフェ事件』や『さよなら天使』などが、比較的高い評価を得ている作家ですね。

それで本作の感想です。
ファンの方には申し訳ありませんが、これはダメです。はっきりって面白くありません。
主人公の語り、キャラクターが好きになれません。キャラが描ききれていません(登場人物に魅力を感じない)。やたらとことわざや文語を使っているのが、素人くさいです。
たった200ページの本なのに、読むのに時間がかかりました。つまらなくて、集中できなかったです。

内容的には、高校で起こったちょっとしたこと(事件未満のちょっとした不可思議なこと)について、主人公がその謎を解くというもの。西澤保彦や加納朋子の小説でよくあるタイプのものですが、謎自体が面白くないので、どうしようもないです。
後半、与えられた少ない材料をもとに、過去の事件を推理するくだりは、そこそこよいのですが、事件自体に意外性も面白みも感動もない。
※その内容は、ある程度史実に基づいているらしいですけど。

米澤穂信ファン以外は、ダメだと思いますよ。ネットで見る限り評価の高い作品のようですが、私には合いませんでした。

氷菓 氷菓
米澤 穂信

角川書店 2001-10
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ちなみに、本作は「古典部」シリーズと銘打たれ、続編『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番 「十文字」事件』なども刊行されている。

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方波見大志『削除ボーイズ0326』

特定の出来事(時間)を消去することができる装置KMD。そんな装置を手にした少年たちの物語。
この設定だけでも、グッときますね!
というわけで読んでみた。

本作は、第一回ポプラ社小説大賞、大賞受賞作(副賞2000万円)。

タイムトラベルものの一種になるわけだけど、
その装置(KMD)の設定がやや中途半端というか、物語がご都合主義になっちゃっている印象あり。「KMDの故障」というファクターもあるけど。
まあ、この本は、あまりゴチャゴチャ考えないで読むのが適切でしょう。

読了後、いろいろ中途半端&モヤモヤ感とかもあり、ビミョウなところでありますが、そこそこ楽しめる作品といってよいでしょう。

「KMDを使わない」というマラソン大会のエピソードは良かったと思う。

にしても、出てくる小学生、マセすぎじゃね?

削除ボーイズ0326 削除ボーイズ0326
方波見 大志

ポプラ社 2006-10
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正直2000万の作品ではないと思う。だけど、この著者には今後期待したいね!
ポプラ社に、こういう作家を育てあげていく、ノウハウ&編集者がいるのかが、疑問ですが。

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石田衣良『うつくしい子ども』

少年犯罪事件の犯人の家族を描いた物語。石田衣良の長編第一作だそうです。

犯人の兄(中学生)の語り、心情などの表現はとても良いけど、ストーリー的には凡作であると思う。ミステリー的な趣向もあるが、それはミステリーを目指したものというより、犯罪者の家族を美化しすぎることの抑制が著者に働いたためではないか、とも思う。

もし「犯人の家族」になってしまったら、どうなるのか?
そのあたり、かなりリアルに描かれている。だけど、リアルな小説ではない。
この小説はリアル風ファンタジーと呼ぶのが適切だと思う(日本語おかしいですが)。

うつくしい子ども うつくしい子ども
石田 衣良

文藝春秋 2001-12
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事件に対する報道内容を、植物の分類方法で、分類・分析しているあたりは面白い。

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奥田英朗『最悪』

東野圭吾『白夜行』『殺人の門』、宮部みゆき『模倣犯』、貫井徳郎『空白の叫び』などと、同じような空気感のある作品。
それらの分厚い作品に比べると、それほど密度は濃くなはないけどね(とはいっても文庫で約650ページ)。

町工場を経営する中年社長、女子銀行員、20歳のチンピラといった3人の主人公の日々、そしてそれらが崩壊していく様を丁寧に描いている。
特に、中年社長の仕事と生活描写は、非常にリアルである。また面白い。

本書は、内容の面白さもさることながら文章も読みやすくスラスラ読めるのが嬉しい。後半の3人の主人公が合流後のジェットコースター的展開は、読むのをとめられなくなることは間違いない。

巻末の池上冬樹の解説(P656)に、
「……映像のダイナミズムと心理のダイナミズムの両方がある……」
「……リアリステックな細部、人物と事件を収斂させていく巧みな語り……」
とまとめているが、まさにそうだと思う。

なかなか傑作だと思う。

ただ、もう少し、気のきいたタイトルをつけて欲しかったな。まあ、確かに最悪な話ではあるけどね。

最悪 最悪
奥田 英朗

講談社 2002-09
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※約53時間ココログのメンテで記事が何も書けなかったんだけど、どうやらメンテは失敗したよう。どうなってるんじゃ、ニフティ!

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西澤保彦『春の魔法のおすそわけ』

一応ミステリーかな。殺人事件とかはないけど。

京極を読んだあとだけに、この本の余りにも軽いノリがちょっと……

内容的には、殺人事件のない森奈津子シリーズの亜種みたいなもの。乱暴な表現だけど。

西澤先生には、 「絶対読んで損なし 西澤保彦初期SFミステリー」で紹介したような作品をまた書いて欲しいんだけどなあ~。

春の魔法のおすそわけ 春の魔法のおすそわけ
西澤 保彦

中央公論新社 2006-10
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京極夏彦『邪魅の雫』

「関口は顔を歪ませた。笑っているのだ。」  (本文P170より)
「関口は鉄砲で撃たれかけた猿のように萎縮してふらつき乍ら立ち上がった。」  (本文P601より)
「おいお前、お前、真実のバカオロカだな。ロイヤルバカオロカデリシャスだぞ。……」 (本文P656 榎木津のセリフより)

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講談社ノベルズで800ページ超えという『鉄鼠の檻』並みの分厚さ。読むのに時間がかかりました。

これだけページ数が多い作品では、作者は「読者に対する情報の出し方」も相当な計算をしていると思う。

本書では、「あの男」「あの女」という表現が多い。こういった表現が多様されると、単に自分の読解力がなく見極められていないのか、あえて中途半端な表現や説明のままにしている(情報を隠している)のでわからなくてもよいのか、区別がつかず不安に襲われることがある。私は、バカオロカなため、途中多少悩みながら読んだわけだが、他にもそういう不安・混乱に陥った人もいるかもしれない。

本作については、これは冒頭「貴女は勘違いをしていたのだ」(P6)という出だしで始まることから推測できるように、最大のキーを隠すための手法(京極夏彦の『絡新婦の理』(冒頭、「貴女が蜘蛛だったのですね」)と同じ)に過ぎないと途中で気づいてからは、安心して読めた。
※女についてはすぐわかったが、男はちょっと混乱しちゃったというのが正確なところ。この章は誰が主人公だよ?という感じで。

ただ、同じような内面を抱えた人物や、警察関係の人物を出しすぎなのが、ちょっと辛かったが。また、内面描写を、表現を変えて何度も繰り返したりするので、辛い部分はある。ファンにとっては、これがよいのだが、無駄ともいえる。

本作では「世間」「世界」「評論」「嘘」「言葉」「価値観」などが重要なモチーフとなっており、京極堂(中禅寺)が講釈をしてくれる。

事件自体は、今までの作品に比べて派手さはない。しかし、流石京極夏彦という仕上がりの作品には間違いない。やっぱ凄いわ。

京極堂の登場シーンが、ちょっと物足りなかったけどね。あ、でもラスト4ページは、何度も読み返してしまいますな。

次作は『鵺の碑』とのこと。いつになるかわかりませんが、楽しみに待ってます!

邪魅の雫 邪魅の雫
京極 夏彦

講談社 2006-09-27
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東野圭吾『赤い指』

『容疑者Xの献身』と似たような空気感のある作品ですね。というか、同じような話だな。

設定が提示された段階で、ネタがだいたいわかります。それでも十分楽しめる。

本作では、東野ファンならおなじみの加賀恭一郎刑事が登場します。なので、加賀シリーズということになるのでしょうか。加賀とその父親との確執なども描かれいるのですが、ラストでメインプロット(のテーマ性)と融合するあたりは見事です。

本書のテーマとなるのは高齢化社会や認知症です。最近は、これをテーマした作品が多いですね。
現実は、誰もが見て見ぬ振りをしているというか、嫌なことは後回しにしているという状況ですが……。

赤い指 赤い指
東野 圭吾

講談社 2006-07-25
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↑なんだか、ウルトラセブンのOPみたいな装丁だな。

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道尾秀介『骸の爪』

『背の眼』の真備、通尾、凛の3人組が登場するシリーズ第2弾。

先日読んだ『向日葵の咲かない夏』に比べると、内容も文章も上。なかなか悪くない作品だと思います。

仏像を主たるモチーフにした本格ミステリです。
単純そうで複雑。偶然と必然が混ざりあい物語が作られている(さりげなくネタバレか?)。デビュー間もない作家の作品としては、相当よく出来ていると思います。伏線のはりかた、まとめ方もよい。
ミステリを読む人なら好きそうな小ネタもつまっていますし、どんでん返し的なものも用意されており、十分に楽しめるかと思います。

ネタバレチックですが、やや気になる点が二つ。単に私の理解力に問題あるかもしれません。
・左手部分を隠すため、仏像を反転させ、右側に来るようにしたとある。右(側)だったら良いという理屈がわからない。→P34からすると、木製棚のすぐ左に置かれているとあるから、右側は目立ちにくいからOKということなのかなあ?
・蚊が左側から来たということはキーポイントではないような気がする。左手で触ったことよりも、触ったこと自体が重要で、「左」に重点を置いて解説しているのが?だった。

骸の爪 骸の爪
道尾 秀介

幻冬舎 2006-03
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↓『背の眼』は新書版も出たよう。

背の眼 背の眼
道尾 秀介

幻冬舎 2006-01
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島田荘司『UFO大通り』

石岡君、象みたいにもたもたするんじゃない、こうしている間にも、人の命が失われるかもしれないんだ(表紙より)

御手洗ものの中編、表題作「UFO大通り」「傘を折る女」の2作を収録。
いずれも、横浜時代のもの。

「UFO大通り」は、宇宙人が戦争をしている!なんていう奇想天外な謎を御手洗が解き明かすという、いかにも島荘的御手洗的な作品。
ただ、かつての作品を読んでいたときにあった「ときめき」的なものがいまいち感じられなかった。
クオリティ的には、それほど劣化してはいないと思うので、私の個人的な感覚に由来するものかもしれない。

一方「傘を折る女」は、「UFO大通り」ほど奇想天外というような謎が出てくるわけではないが、私はこちらのほうが良かった。
「雨の降る夜に、道路に傘を置き、傘を車にひかせて折った女」の不可解な行動を論理的に推理するあたりは非常に面白い。
また、鑑識捜査に精通している犯人の証拠隠滅作業が丁寧に描かれているのも面白い。
構成も凝っていて、良作だと思う。

以下ネタバレ気味なので、反転。たいしたことではないが。
●まさか、「UFO大通り」と同じネタ(アナフィラキシー)を使ってくるとは思いませんでしたよ。わざとかな。
●町屋詩子の死体を出すことで事件が複雑になって面白かった。しかし、P264-265で御手洗が「傘で殴られて事件はないか?」と三宅に聞くシーンがあるが、出揃っている材料に対してやや飛躍がありすぎる気がした。いくら御手洗とはいえ。
●P300で、御手洗がバスジャック事件の被害者の身内が犯人であると特定している。これは、事件における祖父江宣子の行動が、実際に報道されたという前提が必要。バス運転手の解雇などから推測すると、報道されたということでよいのだろうなあ。

といわけだが、「傘を折る女」が良かったのは、御手洗ものの短編フォーマットをやや崩して、犯人の描写に半分くらい割いたあたりが良かったのかもしれない。

なんとなくだが、「御手洗もの本格ミステリー」という島荘がかけた魔法の効き目が弱ってきている気がする(まあ、10年くらい前からそんな感じではありますが)。「ときめき」的なものが無いというのはそういうこと。
島田荘司御大だからこそ、御手洗シリーズだからこそ、読者は過度な期待をしてしまう。本作のAmazonのレビューでやたらと低い評価をつけている人の気持ちが何となくわかる。きっと、本作に低い評価をしている人は、本当に島荘好きなコアなファンなのではないかと思う。
「傘を折る女」は十分に楽しめる作品ではあったが、島田先生にはまったく違うものを書いてほしいと思えてきたところである。

御手洗シリーズを、巨人をクビになった桑田や清原みたいにしないで欲しいと、一部のファンは願っているのかもしれない。所詮外野の声に過ぎないが……。

まあ、なんだかんだいいながら、新刊が出るの楽しみだし、面白いので必ず読みますけどね。

UFO大通り UFO大通り
島田 荘司

講談社 2006-09
売り上げランキング : 35200
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あ、そうそう、死刑廃止論者の島荘にしては珍しく「死刑推進」派のキャラを出してきましたね。これもわざとか?

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道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

『背の眼』で第4回ホラー小説大賞を受賞した道尾秀介の2作目(受賞後第1作)。

『背の眼』は、京極作品に似ているなどといろいろ言われたりしたが、私的にはなかなか良作だと思った。なので、かなり期待して読んだ。

う~ん、微妙かも。『背の眼』よりやや質が落ちた気がする。
何度も推理をひっくり返すあたりなど、よく計算されているとは思うんだけどね。

ホラー要素というか、不可解要素を取り込んだ作品で、まあ意欲作といえるかもしれない。

※どうでもよいが、読んでいる途中、なんとなく、日野日出志の『恐怖!豚の街』を思い出した。知っている人はいないと思うが……。

向日葵の咲かない夏 向日葵の咲かない夏
道尾 秀介

新潮社 2005-11
売り上げランキング : 101301
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↓デビュー作。こちらはなかなか良いと思う。おすすめ。

背の眼 背の眼
道尾 秀介

幻冬舎 2005-01
売り上げランキング : 322932
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貫井徳郎『空白の叫び』

この3連休で読みました。
文芸ポストに5年がかりで連載されていた作品。
とにかく大作・力作である。

ネタバレというか、これから読む人の興味を削ぐといけないので、ストーリーについて触れません。それに下手に感想も書かないほうがよいでしょう。

とにかく壮絶な内容。貫井作品の集大成という感じ。

眼も背けたくなるシーンもあります(2章終盤の葛城君のあのシーンとかね。「結構いけるだろ!」というの)。
上巻を読み終えた時、いろいろ考えてしまいなかなか寝付くことができなかったです。

下巻の最後、もう一人の人物との対面もしてほしかったなあ(男だけでなく)とかとも思ったりして若干消化不良なところではありますが、本書は今後貫井徳郎の代表作になっていくことに間違いないと思う。
この作品で、何か賞を獲るかもしれない、とまで思ったりして……

どうでもよいが、貫井さんは「矜持」という言葉が好きですね。貫井作品最頻出単語ですよ「矜持」は。

あ、そうそう、本書もガンプラの話が出てくるわけですが、各章につけられたタイトルが思いっきり、

イ デ オ ン

じゃん(WWW

わかってしまった私もアレだが(W

貫井さんは富野アニメが好きなんですね~。

空白の叫び 上 空白の叫び 上
貫井 徳郎

小学館 2006-08-25
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空白の叫び 下 空白の叫び 下
貫井 徳郎

小学館 2006-08-25
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キッチ・キッチ~ン!ウォオオオオ~!!!(←わかる人だけでよいです)。エヴァにハマッた頃に、TV版と劇場版を一気見しましたよ。TV版のEDテーマは名曲ですな。音楽がすぎやまこういちでしたからなあ~。

伝説巨神イデオン 接触篇/発動篇 伝説巨神イデオン 接触篇/発動篇
矢立肇 富野由悠季 塩屋翼

タキコーポレーション 2006-05-05
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北村薫『盤上の敵』

感想ですが、主人公の奥さんの思い出・過去の話ばかりで、うんざりでした。
もちろん、この作品独自の世界観の構築、またメインプロット(仕掛け)を生かすため、さらには単にトリック主義にならんがための描写であるが、やや多すぎないか?
バランスが悪いというか。

仕掛け自体は良いと思う(粗いが)。なんか変だなあ~と思いながらも、まんまとだまされたよ。
物語が収斂していく様もよい。けどな~。

自分の女房が人質にされてるという状況で、友達に会いにいく&必要なものを買いにいくなどの理由で、警察の前から姿をくらますのは、ちょっと不自然、無理がある。
また、主人公は、どの段階で計画を練ったのか? 犯人と最初に電話中で話した時しかないわけだが……
《悪》もなんか、中途半端だし。
世間的に評価の高い作品ですが、私的にはビミョウでした。

盤上の敵 盤上の敵
北村 薫

講談社 2002-10
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あ、あと、梶原には迷惑をかけたくないから、東京に追いやったんでOKですよね?

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倉知淳『壺中の天国』

この作品、私的にはなかなか良かった。
作品全体に漂う空気感が好き。
主人公の主婦とその娘のほのぼのとした日常の描写などがよい。変に重たくないんだよね。
(チャリンコのブレーキをかけるシーンで、毎回「カエルを絞め殺すみたいな」という一文には笑った)

ミステリーの解答編部分では、読者にページを(戻って)見返えしさせるという嬉しい作業をすることになります。
あまり売れてないようですが、私は結構気に入りました。

※ちなみに、倉知淳といえば『星降り山荘の殺人』が有名な人ですな。

壺中の天国 壺中の天国
倉知 淳

角川書店 2000-09
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おすすめ平均

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加納朋子『ガラスの麒麟』

加納朋子を読んだのは『ななつのこ』『魔法飛行』以来、久しぶり。全部で6作からなる連作集なのだが、1話目の(表題作でもある)「ガラスの麒麟」を読み終えたときは、壁に投げつけようかと思ったよ、はあああ~!という感じ。

と思いつつも一応最後まで読んだ。まあまあというかイマイチというか。世間的に評価も高く、解説で山口雅也がベタ誉めしているが、ミステリとしても青春モノとしても、いたって凡作でしょう。肝心な部分をぼかしてるというかモヤッとしてるし、不明点も多い。
好きな人は、好きということでよろしいんじゃないでしょうか。

ガラスの麒麟 ガラスの麒麟
加納 朋子

講談社 2000-06
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島田荘司『溺れる人魚』

御手洗ものの短編集。

「溺れる人魚」
「人魚兵器」
「耳の光る児」
「海と毒薬」

の4編収録。「海と毒薬」は、『島田荘司「異邦」の扉に還る時』に収録された作品で、『異邦の騎士』をリアルタイムで読んできたファンにはたまらないだろう。悲しい話を書くのは本当にうまい。ただ、死刑廃止論のメッセージ性がやや強い。

なんていうかなあ~、全体的にこの手の御手洗短編ものは、やや飽きてきたなあ。最近では『摩天楼の怪人』がなかなか良かったわけだが、『帝都衛星軌道』といい本作といい、トリック(ネタ)がねえ~。いかにも凄そうな謎が提示されるけど、単に問題編でトリック隠しをしているだけな気がする。

事件の描写よりも、歴史のお勉強とか、あまり関係ない部分はとてもよかった。

※遠藤周作の『海と毒薬』を近く読んでみるか。

溺れる人魚 溺れる人魚
島田 荘司

原書房 2006-06
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横山秀夫『震度0』

2006年版の『このミス』で3位だった作品ですね。横山秀夫の作品は、どれも図書館予約件数が凄いですね。本書は、ようやく借りやすくなったので、先日予約して1ヶ月ほどで順番がまわってきました。

非常に演劇的な作品だと思いました。
背景で阪神大震災が進行(直接的には関係ない)、メインプロットとしてある警察官の失踪を、警察内部の濃厚な権力闘争とともに描いてる。

本作は、短期間で一気に読むべき本です。
キャラクターが丁寧に描かれているが、県警の各部署の部長(年輩)が主要キャラであるため、その肩書きと名字が単に記号として識別させるだけのものとなり、頭の中で横滑り現象を起こしがちである。
ちょっと時間をかけてダラダラ読んでしまったので、私的には読み方をミスったなと思う。

核心的な部分については、同じく横山秀夫の『半落ち』のように【過去の秘密】系である。私は、テレビの2時間ドラマなら、【過去の秘密】系でもよいが、小説の場合創意工夫に欠ける気がするので減点だなあ。まあ、すごい作品には違いないけど。

震度0 震度0
横山 秀夫

朝日新聞社 2005-07-15
売り上げランキング : 19097
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単に「震度0」というタイトルをつけたいがために、背景で阪神大震災を進行させた気が……

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新堂冬樹『底なし沼』

またまた新堂冬樹。
本作は、新堂冬樹の本領発揮ともいうべき、闇金&ヤクザな小説。

最近は詐欺や消費者金融のニュースも多く、また先日は日テレで「イマイ記者」の特番(やらせっぽいが)なんてのも放送されたりしたこともあり、絶対に金を借りたり、だまされたりなんてことはあってはならないと、皆さん強く感じてらっしゃるかと思います。
本作を読めば、その気持ちをより強められるでしょう。

本作の主人公蔵王(ざおう)は、「債権回収機構」の社長。これは、闇金などで一度金を借りた人間をターゲットとして、金を二重取りをするというむちゃくちゃな会社だ。法外な利息をつけて金を返せ!というのではなく、いきなり言いがかりをつけて金を返せというのである。からくりとしては、闇金業者から借用書を善意の第三者として譲り受けるということになっているわけだが、とにかくムチャクチャな手法である。

ストーリー的には、この蔵王と、結婚相談所を経営する日野が敵対関係になるプロットがメインで扱われてる。この日野という男、『無間地獄』の玉城的な役割でなかなか面白い。日野も(コンプレックス産業としての)結婚相談所で、ムチャクチャなことをやっているのだが、この二人のだましあいはなかなか面白い。

後半になると、対立構造がこの二人だけにとどまらず、もっと大掛かりなものとなる。ドラゴンボール的に次から次に強くてムチャクチャな奴が出てくる。終盤は展開が早くハードアクション中心、また「スパイ」「裏切り」といった要素が出てきて複雑な様相となる。

かなりエグくて暴力的描写も多いが、久しぶりに楽しめた。快作である。
新堂小説としては、B++ いや、A- くらいかな。

※疑問
棚橋ってあれからどうなったの?  しおんって、一人だけで帰ったの?
栄作から渡されて日野が破った手形って?

★新堂冬樹作品・勝手に格付けリスト★
※個人的には、もっと細かく分類しているんだけど、とりあえず3段階で。

【Aクラス】
無間地獄、溝鼠、三億を護れ!、カリスマ、悪の華 、鬼子、底なし沼

【Bクラス】
忘れ雪、炎と氷、銀行籠城、背広の下の衝動、聖殺人者、ろくでなし、動物記、あなたに逢えてよかった、吐きたいほど愛してる。

【Cクラス】
毒蟲vs.溝鼠、黒い太陽、砂漠の薔薇、アサシン、血塗られた神話、闇の貴族、ある愛の詩、ぼくだけの☆アイドル、誰よりもつよく抱きしめて、僕の行く道、天使がいた三十日

 

底なし沼 底なし沼
新堂 冬樹

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※追記。北朝鮮が核実験を実行したようですな。『底なし沼』の中では、ヤクザの世界ではなによりも、「メンツ」を大事にするとあります。今回の北朝鮮がらみのニュースを見ていると、外交における「国家のメンツ」という要素について、改めて考えさせられますな。

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浦賀和宏『八木剛士史上最大の事件』

ガンプラ、いじめ、童貞、ナンブラバンバンバン、八木メェー、森口博子、純菜のパンツ、好き好きベイビー……

と、いきなりキーワードを列挙してみました(意味なし)、ようやく『松浦純菜シリーズ』第4弾を読み終えたところです(私的には『八木剛士シリーズ』と呼んでいるが)。

このシリーズになってから、浦賀タンやたらと執筆速度が速いですね(W 
それはともかく、この本、前ソデの、

僕の恋人は松浦純菜

に、グッときますね。

本作も例によって、我らが八木剛士の妄想などが延々とリピートしていて、物語がなかなか進まず(W 
読んでいてもまたかよ!とややうんざりな感もあります。

内容的には、前作『上手なミステリの書き方教えます』で印象的なラストがあり、いい感じに終わったわけですが、本作では八木剛士が酷いいじめにあいます。かなりハードです。
ここまで執拗ないじめシーンや妄想シーンを、大量に書けるというのは、著者自身に経験があったのか?とすら思えてきたりもするわけですが……

で、タイトルである「史上最大の事件」とはいったい何なのか? これが本作の最大のポイントで、読者はちょっとした意外性を味わうことができると思います。(各章タイトルに、●日前、●時間前とか、書いてあるから、強い期待を持って読みますからね)

本作では、名探偵コナンでいうところの、謎の黒ずくめ集団みたいのも、大きく絡んできてます。
次作『さよなら純菜、そして不死の怪物』って、いよいよ完結?とかとも思ったりします。ただ、P313にTakashi Strikes Backと書いてあることからすると、まだ完結ではないのか? とりあえず復讐するだけか? とも思ったり……いずれにしろもうすぐ発売ですね、楽しみです。

このシリーズは、万人にオススメできる作品ではありませんが、私は好きです。

※P162 下段に誤字?「良く」はひらがなで「よく」では?
※P205  これは、意図的に最後だけ「ほしい」と、ひらがななのか?

■参考 松浦純菜シリーズ刊行順リスト
 ※刊行順に読みましょう!

1.松浦純菜の静かな世界
2.火事と密室と、雨男のものがたり
3.上手なミステリの書き方教えます
4.八木剛士史上最大の事件
5.さよなら純菜、そして不死の怪物

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浦賀 和宏

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誉田哲也『ストロベリーナイト』

ようやく読了しました。仕事が忙しくて読み終えるのに、1週間もかかっちゃったよ。

で、感想ですが、

ごめん。つまんないです。

まず、事件自体が面白くない。前半があまりにも淡々としている(読むのに時間がかかった一因)。
今年出た本というのに、内容的な目新しさがまったくない。先が読める。主人公の刑事が勘が良すぎるのが、やや強引な感じがした。
この作者の作品初めて読んだのですが、本書については素人が書いた小説? 新人賞受賞作? 2作目くらい?とか思うようなレベル。
猟奇犯罪ものとしても普通な内容です。まあそれでも、途中からはそれなりには読めるので最後まで読んだけどね。中盤にある過去の事件に関する記述はよかった。

ファンの方もいると思うので、これ以上書きませんが、私としてはおすすめできません。自己責任でどうぞ。

Amazonの評価高すぎです、せいぜい☆3つではないでしょうか。

ストロベリーナイト ストロベリーナイト
誉田 哲也

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久坂部羊『無痛』

『廃用身』『破裂』に続く、久坂部羊の書き下ろし第3作。

この作品は、図書館予約件数が多いもののひとつですね。
劇団ひとりの『陰日向に咲く』と同じタイミングで予約して、先日ようやく借りることができました。

本書のオビには、
「見るだけですぐに症状がわかる二人の天才医師、
痛みの感覚をまったく持たない男、
別れた妻を執拗に追い回すストーカー、
殺人容疑のまま施設を脱走した14歳少女、
そして刑事たちの前にたちはだかる刑法39条」

とあります。
まさに、これがこの作品のエッセンスです。

で、感想ですが、う~んという感じですな。
ちょっと久坂部作品に期待し過ぎたせいもありますが。

精神障害者等の犯罪、少年法、生来犯罪者説など、最近ではエンターテインメント小説という形でないと、扱えない話がいろいろでてきます。
それはいいんだけど、ちょっと詰め込み過ぎな感がありますな。『破裂』もそうでしたが、もっとシンプルにまとめて欲しかった。
ストーカーの話はないほうがよかったのではと思う。よくある<猟奇殺人モノ>になっていたのが残念。終盤ちょっと雑だし。

医師作家である久坂部らしい、手術シーンの描写や、かなりヤバめの医師の考えが提示されるあたりはよいんですがね(犯因症の説明も中途半端な感じしましたが)。

なんか、あれ、なんとなく首藤瓜於『脳男』を思い起こさせるものがありましたし。

久坂部先生と幻冬舎の担当の方、できれば『廃用身』のようにシンプルかつ強烈な作品を期待してます。
(もしかしてこのブログを見るかも知れないので一応書きます。)

続編作るつもりなのかなあ、と思ったりもするところですが……

無痛 無痛
久坂部 羊

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◆参考 久坂部羊 第一作 『廃用身』 やばいというかおぞましいがとにかく凄い!メディカルホラー!  おすすめです!

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久坂部 羊

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◆参考 久坂部羊 第ニ作 『破裂』 高齢化社会とどう向き合うか……

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恩田陸『ユージニア』

最近、JRの駅構内・社内でやたらと目にする恩田陸の映画『夜のピクニック』の広告。
ブログではすっ飛ばしたけど、先日読み終えたばかりです。それに引き続き同氏の『ユージニア』を読んだ。
仕事とブログの作りなおしなどで、バタバタしていたたこともあり読むのに時間がかかってしまった。
最初読み始めたとき、思わず『Q&A』を思い出してしまった。というのも、ある事件をいろんな人間の告白(インタビュー)形式で綴られているからである。ああ、これは『Q&A』『愚行録』『藪の中』などのパターンだろうと。
で、もしラストうやむやパターンだったら、イヤだなあ~とか思いながら読み進めた。

だが、ある程度読み進めると、通常の小説的パートがあったり、新聞記事だけのパートがあったり、なかなか凝っている。
多数ある告白(インタビュー)パートでは、その人物の内面描写的なものが多く、頭の切り替えがやや面倒。まあ小説に深みを出すためだから仕方ないかもしれないが。(これも読むのに時間がかかる理由)

以下、ややネタバレ気味。
さまざまな断片が、ある程度きちっと嵌りこみ、一応の答えを提示する。
しかしその方法論が、ラスト前の章で、●●が事実関係を語っておわりかよ、なんと陳腐な!と思わせる。まあ、その後に続く最終章で一応の意外性的なものが提示されるけど、それも読者にそう感じさせるための(前提となる)事実関係の描写がぼやけているというか、その他の内容に埋没してしまい存在感が薄いため、いまいち効果的ではない。(わかりづらい?)
そして、いくつか謎が残る(読者に解釈を任せるということなのか、単にこういう作風なのかわからん)。

う~ん。
恩田陸作品もかなり読んできたが、だいたいこんなものが多い。(読み終えてから、ページをパラパラめくってみてみると、あ、なるほど、ここの描写はこういうことか、という発見とかもあるけどね)

恩田作品はどれも記憶に残りづらいんだよなあ。読んだ直後は極度のもやもやがあるけどね。
そういう意味では、『夜のピクニック』は、良かったかも。
どれも、そこそこ面白いし、いい作家だと思うけど、私には合わないのかも知れない。
過度の期待をして読むと、ガッカリする可能性があるので要注意。

恩田陸は、ミステリ風要素を取り込んだ作風に小説家としては、よいと思うけどね。
(ミステリーとして、曖昧さを多様するのは、賛否両論あるでしょう)

ちなみにこの作品、構成も凝っていますが、カバーとか本文の文字組とか、やたらとブックデザイン凝ってますね。

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恩田 陸

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井上夢人『ザ・チーム』

サクサクと読める。
まあ、こんなもんかという本。
もう少し高い内容を期待していたが、雑誌連載の短編連作集なので、仕方ないか。

the TEAM the TEAM
井上 夢人

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貫井徳郎『愚行録』

著者のサイトに、読後感が悪いとあったので楽しみにしていた(W
事件の陰惨さよりも、人間関係・人間社会の嫌な部分がじっくりと描かれている。

ただ、全編インタビュー形式というか語り手の独白形式というのが、途中でだれる。
貫井徳郎らしい、仕掛けも一応用意されており、まあよろしいんじゃないでしょうか。

慶應の、内部と外部の関係が、貴族と平民のように描かれていたが、本当にあそこまで徹底してるんですかねえ?

愚行録 愚行録
貫井 徳郎

東京創元社 2006-03-22
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